私は咳払いを1つすると、気を取り直して

「ここは〈バルダクタル王国〉って所なんですね?」

と訊いてみた。


「えぇ。


昨日、空からお城が見えなかった?

あれが〈バルダクタル城〉。

この家はお城の裏手にあるの」



そう言えば、ゆうべ空を飛んでいたとき、ローゼさんの家の向こうに象牙色のお城が見えたっけ。


2個分の月明かりにライトアップされていたその姿が脳裏に浮かぶ。



「確かにありましたね。それで……」


私はミルクティーを飲んで口を潤すと、肝心な点をローゼさんに尋ねた。


「そのバルダクタル王国、と言うか〈こちらの世界〉には、一体どんな危機が迫ってるんですか?」


「隣国の〈クリステラクト〉が、こちら側の世界を支配しようと勢いを強めているの」


ローゼさんは顔を曇らせた。