裏面ワールドトリップ

婦人は車を降りた私の前へ来ると

「お帰りなさいませ」

と言って、深々と頭を下げた。


「あ……ただいま戻りました」


私も同じように頭を下げる。


「娘を……シャルロッテを助けてくださって、

……何とお礼を申し上げたら良いのやら」


そう言って、彼女は私の肩を優しく抱き寄せた。


「あの、王妃殿下。

ウェディングドレス、羽根がかなり抜け落ちてしまって。

すみませんでした」



王妃は体を離して、私の目をじっと見つめた。


慈愛に満ちた、あたたかな眼差しだった。


「ドレスなんて、また作り直せば良いのです。

それよりも、貴女が無事に帰って来てくれて、本当に良かった」



それから王妃は、ハウスドルフさんの方へ向き直って言った。


「ハウスドルフ中尉、ご苦労様でした。

怪我をしてしまわれたのですね」


ハウスドルフさんは一礼し、

「応急処置は致しました」

と答えた。


「任務の報告が済んだら、すぐローゼに診てもらいなさい。


さぁ、早く大広間へ。

みんな貴方たちの帰りを待っておりましたよ」