裏面ワールドトリップ

されるがままのモーリッツの体を、爪先でつついてみる。


「ぴくりともしないじゃないですか」


「だったら、この程度の攻撃で死ぬ方が悪い


……冗談だよ。

ほら、ちゃんと息してるし、脈もある」


「はぁ……


あ、それはそうと
モーリッツが他人の意識に入り込めるって噂、本当みたいです。

目を覗き込まれるとまずいですよ」


ハウスドルフさんは手を止めて私の方を見た。


「まずい、とは?」



私はモーリッツにされた事の一部始終を、ハウスドルフさんに話した。



「……なるほどな」


ハウスドルフさんはそう呟くと辺りを見回し、趣味の悪いベッドに視線を留めた。


布団の端の方の布を長く裂き、それでモーリッツの目を覆う。


「ローゼから聞いたかもしれんが、つまりそれが『言葉小人に心を食い荒らされる』って事だ。

〈言葉小人〉なんてものが本当にいるのかどうかはともかく、危ないところだったな」