裏面ワールドトリップ

「誰からも必要とされない哀れな貴様に……この俺が価値を与えてやろうと言うのが、わからんのか」


憎悪に満ちた抉るような視線が私の瞳に注がれた途端、モーリッツの言葉は重さを増し、激しい濁流となって脳内に渦巻いた。


「う、うるさい……!」


「強がっても無駄だ。


……ふん、若くもない、美しくもない

誰にも愛されない

女神だか何だか知らんが、惨めなものだな」


濁流の一言一言は胸に突き刺さり、毒矢のようにじわじわと、私の心を苛んでいった。



自分が誰からも必要とされない、何の価値も無い人間である事は、紛れもない事実である。


それは他ならぬ私自身が、一番身に染みてよくわかっている。



――私は若くも美しくもない、人にも愛されない

八方塞がりでどうしようもない、誰より惨めで哀れな、寂しい三十女――

そんな自分の声までが、頭の中に轟々と響き続けた。


ない交ぜになった悲しみと悔しさとが、目尻から溢れ落ちた。