裏面ワールドトリップ

「貴様、よくも……」


モーリッツは覆い被さるようにして、仰向けに倒れた私の肩を強い力で押さえ付けた。


顔中から噴き出す汗と血走った目が、強烈な痛みと、それをも凌駕するほどの怒りを物語っている。


「この屈辱……只で済むと思うなよ……」


怨めしげに震える声は、まるで呪いの言葉でも唱えているかのようであった。



モーリッツの拘束から逃れようと、私は必死で抵抗した。


ディアマントが床に転がり落ちる。


ドレスの裾がひらめき、縫い付けられた白い羽根が宙を舞う。



もがきながら、もう一度ウイスキーの瓶を振り上げようとして

直後、私は意識が遠のくほどの絶望に襲われた。


その唯一の武器を持っていない事に気付いたのだ。


ディアマントを手に取る際、無意識にどこかへ置いたのだろう。