裏面ワールドトリップ

私のそんな、ほんの僅かな心の揺らぎも

当然モーリッツには伝わったはずである。


「どうだ?

お前にとっても悪い話ではないと思うが」



モーリッツの言葉に嘘偽りが無いとすれば……

私にとっては、悪くないどころか非常に都合のいい、楽な話である。


就職活動しなくて良い上に、私の価値を認めてくれる一国の王と結婚して、何不自由無い暮らしまで出来てしまうのだから。


モーリッツはインテリアやファッションのセンスには大いに問題があるけれど、そこは私が何とかしてあげられる。



そして

そうやって一緒に過ごしているうちにこの男を好きになる可能性は、ゼロではないと思う。


何だかんだで接する機会の多い相手に恋をし、それが最善の選択であったと信じてしまう

人間の習性なんて所詮そんなもの。


私もこの歳になって、恋愛に運命的な要素は期待していないし

だったらモーリッツの提案を飲むのも、充分アリ

ではないだろう、か

…………?



――最っ低。