モーリッツは更に目を丸くして後ずさり、私の顔から爪先へと不躾に視線を這わせた。


「……貴様、バルダクタルの姫ではないな」


それから再び、私の顔に視線を定め

まるで奈落の底のような、ぞっとするほど暗く深い瞳で、私の目を凝視した。



ふと、この〈幽霊水晶の館〉の外観を思い出した。



黒く鋭い結晶の尖端。



それが無限の深淵から伸び出して私の脳を貫くような、奇妙な錯覚を覚えた。



「……ふん、なるほど。

バルダクタルの魔術師が異世界から召喚した最高峰の女神か」


「いや……まぁね」


「そうか。

それは面白いな」