裏面ワールドトリップ

お姫様はモーリッツの事を頭に思い浮かべたのか、うっとりと目を輝かせた。


「彼は全てにおいて完璧なの。

どんな表情をしていても、どんな言葉を口にしても、何をしていても。

それにとっても優しいけどちょっと強引な所もあって、でも、そこが却って素敵で――

貴女も女ならわかるでしょ、そういうの」


「わかりませんね」



私が冷ややかにそう言うと、お姫様は小馬鹿にしたようにフンと笑った。


「もしかして貴女、そんなふうに愛された事が無いのね?」


「ありません」


「かわいそう。

でも無理も無いわね。

貴女みたいな隙の無いオバサンじゃ、誰だって敬遠すると思――」