裏面ワールドトリップ

やがて水晶の壁に、人が1人通り抜けられる程の穴が開けられた。


レニー少尉たちに続いて私もそこから中に入る。



「姫、お怪我はございませんか?!」


「大丈夫ですか?」



耳元で話し掛けられても肩を揺すられても、お姫様はまるで魂が抜けてしまったかのように全く反応しない。



レニー少尉がお姫様の前にひざまずき

「国王陛下も王妃殿下も、とても心配していらっしゃいますよ。

帰りましょう」

と言って、彼女に手を差し伸べる


と――



お姫様は突然、その手をぴしゃりと払いのけた。


虚ろだった目をつり上げ、唇を引き結んでレニー少尉を見下ろしている。