裏面ワールドトリップ

靴音と共に、話し声も耳に届いた。



「まずいな。

こっちまで侵入して来やがった」


「下はどうなってんだ。全滅か?」



侵入……?



彼らの言葉の意味に気が付いた私は、心臓が跳ね上がるほどに慌てた。



あれはレニー少尉たちじゃない。


クリステラクト兵の残党だ。



――どうしよう、こっちに来る……!



私は踵を返し、全速力で逃げ出した。


歯を食いしばって必死で恐怖を飲み込み、もつれそうな脚で漆黒の廊下を懸命に駆け抜ける。


――どうしよう、どうしよう。



彼らとの距離は数十メートルといったところか。


ハウスドルフさんは、敵を見付けたらすぐに戻って来いと言ってたけど

正直そこまで逃げ切る自信は無い。


万が一の時はここに捕らわれた女性の振りをして遣り過ごすか

……いや、無理だ。


バルダクタル軍のグルオンスーツを着ているから、すぐに正体がばれるだろう。



どこか、隠れる場所があれば……。