「つ、じくん?」

「──なあ」



見下ろす視線はそのままに、辻くんが口を開いた。



「なあ、おまえは、名前で呼んでくれないの?」

「……ッ!」



まっすぐに向けられた彼の言葉に、カッと頬が熱くなる。

……「これからは名前で呼んでいい?」と彼に言われたのは、つい2日前の出来事だ。

それから今日まで、辻くんが私の名前を口にするたび、私は飽きることなくどぎまぎしていて。

そして同時に、私も名前で呼んでいいのかな、なんて、実はこっそり思ったりしていたんだ。

……もちろん、彼はといえば宣言通り、いとも簡単に私のことを『まお』だなんて呼んでいるのだけど。