突然のことに驚いて振り返ると、思ってた以上の近い距離で、彼が私を見下ろしていて。



「……いい、」

「え?」

「まおが、いてくれれば……いい」

「……ッ!」



ぼやけた視線でそう言われて、ボッと、顔に熱が集まる。

そして私が何か言う前に、今度は軽々と、いわゆるお姫様抱っこで身体を持ち上げられた。



「へっ、ひ、ヒロく……っ」

「………」



ボスン、と降ろされたそこは、彼が普段使っているベッドの上。

痛みはなかったけれど驚いた私は、ベッドに仰向けのまま硬直して彼を見上げてしまう。

……え、待って、なに、この状況……。



「………」



ギシリ。小さく音をたてて、ヒロくんが私の上に覆いかぶさった。

見下ろしながら、私のあごに右手を添え、その親指で私の唇をなぞる。

私の心臓はもう、バクバクしすぎて限界だ。



「ひ、ヒロくん……?」

「……もっかい」

「え?」

「もっかい、呼んで」



熱っぽい瞳でそう言って、彼は首を小さく傾ける。

もっかい呼んで、って……名前を、ってこと、だよね……?