黙って立ち上がり、逃げ出した。 意味も無く走って、駅に着く頃には汗だくで。 「…翔っ…会いに来て…」 息を整えるふりをしてしゃがみ込み、涙を隠す。 「会いに行く」という選択肢は、既に無かった。 その時点で、だめだったのに。 ―・・・ 『茉柚?』 「…えっ、あ…えっと、ごめん…何だっけ」 『…いや、別に大した事じゃないからいいけど』 「…ごめん、ね…」 『…疲れてる?』 「…あ…うん、そうかも。ごめんね」 『そっか』