「ケンカしたの?」


「あー、えーっと、なんでもないんだってー」


「ひぐち君?」



なんだ?ケンカだと思ったんだけど、それならばこんなに吃ることもないだろう。


基本的に表情豊かなひぐち君は、普段見ていてとてもわかりやすい子だ。

今回も、あたしに言えない何かをして、隠したいことがあるが隠しきれてないといったところか。



「ひぐち君。何したのかわからないけど、怒らないから言ってごらんよ。」


「いや、怒るとかそういうんじゃなくてー…」


「怒らなくていいなら何よりだ。なら、なんで隠す?」


「それは、ほら、男は寡黙に背中で語るものじゃん?」


「今さらそんなこと言われてもねぇ。ひぐち君おしゃべりさんなのに今日から寡黙キャラに変更なわけ?」


「そ、そういうこと!」



それだけ言うとバタバタと走り去っていく背中。

背中で語るもなにも、バタバタ感しか伝わってこないよ先生。



「こらー廊下走らないのー!」



ちゃんと聞こえたのか、ピタッと止まった背中がずいぶんと素直で可愛らしく感じた。