「本当に?」


「ただ、校庭を眺めていただけですよ。先生が心配するようなことは、何もありません。」



ちゃんと先生の目を見てそう言い切れば、先生の目が柔らかく弧を描いた。



「……そっか。うん、ボーッとするのも大事。…なんかあたし、お邪魔しちゃったみたいだね。」


「邪魔だなんて思ってませんよ。」


「いーや、お邪魔虫でした。今日のところは退散します。」


「あれ?何か用があったから来たんじゃないんですか?」


「んーん。会長くん、最近放課後の勉強会来ないから、元気かなーって思って来てみただけ!」


「そうですか。今は生徒会の仕事が少し立て込んでて…落ち着いたらまた行きますよ。」


「なんか、催促してるみたいになっちゃったね…ごめんね、忙しいのに!じゃあお邪魔虫は帰ります!お仕事頑張ってね!」



それだけ言って廊下へ出て行ってしまった先生。



あれは、気を使ってくれたんだろうな…


生徒に気を使うなんて、のぞみ先生はやっぱり変な先生だ。




夕日が沈み始め、黄昏の空が闇色に染まっていくのを見ながら、ひとつ息を吐いた。



『お仕事頑張ってね!』



よし。仕事するか。



END