「誰も聞いてないの?」


今いないらしい佐藤くんは、なんか地味であんまり印象にないクラスメイト。

もしかしたら、入学してから今まで、話したことすら無いかもしれない。




「というか、オレ、いないことすら気づいてなかったわ。」

「あたしもー。」



どうやらみんなも同じみたい。

言い方はひどいけど、いてもいなくても変わらないってか、わからない人なんだよね。佐藤くんって。



みんながふざけて騒ぎ出したが、先生はなにも言わない。

いつもなら、一緒に盛り上がるのに。




「あー、あのさ、今あたし、すげー悲しいわ。」




いつもと同じような笑顔。
いつもと同じような声。

それなのに、背筋が震えた。