「これ、やるよ」


昼休み、英語科準備室、別名中島城に、武藤くんがやってきた。



そしてその手にはなぜか大量のみかんが入った袋。



「なんでみかん?」


「うちの母親の実家から送られてきたけど、食い切らないから持ってけって。兄貴が」


「あら、なるほど。あたしがもらっていいの?」


「ほら、あんたみかん好きって言ってただろ」


「言ったことないわそんなこと。まぁ、好きだけどさ」


「じゃあ別にいいじゃねーか。ありがたく受け取れ」


「うん、もらえるもんはもらっとく。ありがとう」


こんな大量に貰っていいのか。

これで当分みかん買わなくて済むわ。


実はあたしも凌斗さんもみかん大好きだから、いつも良いみかん争奪戦になるのだ。



「これ、わざわざ持ってきてくれたんだ」

「なかなかの屈辱だった」


中が見えない紙袋とかならまだしも、半透明なビニール袋じゃ中身が丸見えだ。


武藤くんが大量のみかんが入った袋を持って登校する姿を想像したら、思った以上に面白かった。