「なんでもないよー。ただほら、秋は訳もなく寂しくなる季節でしょ?」
卒業を意識して寂しくなったことを悟られたくないのか、わからなくもない理由を並べる和樹。
「そう?秋って寂しいの?」
「センセーには情緒というものが足りないのだよー」
「ひぐち君に情緒とか言われるとは…あたしは別に夏でも秋でもみんながいるから寂しくないんですー」
この人はどうせ、年がら年中楽しく自分を持って過ごして行くんだろうな。
「オレも、先生といる分には寂しさとか感じる暇ないですね。騒がしいから」
「今絶対バカにしたよね?完全に騒がしいって言ったよね?」
「事実ですからね」
「うん、否めないや。あ、会長のくん、体調はもう万全かい?」
「お陰様で、完全復活です」
「もう少し大人しくしてても良かったと思うけど」
枝並は生徒会を引退して気が緩んだのか、はたまた季節の変わり目の流行り風邪にかかったのか、数日体調を崩して寝込んでいたらしい。
ざまぁみろと言いたいところだが、そんなことを言うと、またセンセーになんか言われるからやめておいた。
「西野くん、風邪は舐めてかかると怖いんだぞー。あたしなんて、喉潰されて全く声出せなくなったことあるからね!医者に行ったら治るまで極力話さないでくださいって言われて、数日筆談で過ごしましたよ!」
ほら、こんな感じで何かしら反応するんだ。