女性客が多い中で、僕はビルへと入ることに一瞬、気遅れしてしまう。

僕は、ヒカルエのエントランスをくぐり、エレベーターを探した。

案内板を頼りに、エレベーターを見つけ、ボタンを押して呼び出す。

エレベーターは、地下から真っ直ぐに一階へとやって来る。

ポンという音と共に扉が開き、僕は中へと入っていく。

僕は、エレベーターのドアを締めようとする。


「あ! 待って! 待って!」


と、今度は男の子の声が聞こえた。

僕は、慌てて「開く」のボタンを押し、男の子をエレベーターの中へと入れる。

「あ、すんません!」

金髪で、ノリの軽そうな飄々とした男子が、申し訳なさそうな顔で僕を見た。

「い、いえ。別に」

僕は、短くそう答える。

「えぇっと、二十五階押してもらえますか?」

男子がそう言うと、僕は言うとおりに二十五階を押した。

そこは最上階のフロアである。

「あ。君も、βテストプレイヤー?」

僕は、咄嗟にそう尋ねる。

男子は、意外そうな表情を浮かべて僕に視線を向ける。

「おう! じゃあ、あんたも?」

「う、うん」

「おお! 奇遇も奇遇! 俺も、だよ! あ、ということはそこのお姉さんも?」

男子の声に反応し、僕は後ろを振り返った。

男子に、お姉さんと呼ばれた女性も、僕たちを交互に見やる。

頭を思い切り、ひねったからだろうか。

ズキリという痛みと突然の耳鳴りに襲われる。

ああ、エレベーターが上へと向かっているからか。