影が完全に消えてなくなる。私には何が起こったのか理解出来なかった。酔いは完全にさめていた。

声も出ず、立ち尽くしていると、天使が私の方に向き直る。


「探したぞ。影の気を追っていて正解だった。」

年の頃は16歳くらいで、幼く、また整った顔立ちをしていた。先ほどの言葉は私に言ったのだと気付いた。


「あ、ありがとう。」

状況を把握出来ず何を言って良いのか迷ったが、私はこの天使に助けられたらしい。とりあえず私はお礼を述べた。


「ふん、礼などいらない。」

天使は表情を変えずそう言った。



そうこうしてる間もなく、天使の羽が徐々に小さくなっていった。ふた回りほどあった羽は10秒もしないうちに消えてしまった。


羽が完全になくなった天使をこうやってみると、普通の高校生に見える。
…ただ、服装を除いては。



「あなたは一体…?」

完全に人と化した天使に向かって、私は疑問に思っていたことを口にした。

いつの間にか恐怖心は消えていた。



天使はやはり表情を変えずにこう言った。

「女神の血をひくお前を悪の手下である影が狙っている。オレは影からお前を守るために現れた。」