おや。珍しい人からの電話があったのか。
ベッドから起き上がった。
昔からの知り合いで、調査会社の社長をしている変わった人がいる。その人からの着信に心臓がドクンと音を立てた。
前にお世話になったのは、テルが巻き込まれた監禁事件の時。あれ以来何の連絡もなかったのに、何が―――――――――――
一つ空咳をしてから、リダイヤルを押す。
耳に押し当てて発信音を聞く間、柄にもなく緊張した。
あの人の前だとこうなるのだ。紳士的な態度を崩さない、いつでも微笑みを浮かべた長身の、モデルのような外見の男性。眼鏡の奥で瞳を細めている。その目に見られたら、俺は全身が固まったようになってしまうのも、昔から変わらない。
よく判らない人なのだ。感情が見えないのが不安感を煽るのかもしれない。
まだ相手は電話に出ない。
忙しい時間だったのかも。
チラリと壁の時計に目をやった時、電波が通じた。
『お待たせしました、滝本です』
男性にしては高めの落ち着いた声が出る。電話の向こう側がざわざわと煩い。滝本さんは外にいるのだろう。
「あ、神谷です。こんばんは」
何か言うときに、あ、とつけてしまう癖を止めないとな、そう思いながらもまた言ってしまった。
電話の向こうで滝本さんが、ああ、と言う。



