姉とは15歳年齢が離れていた。
だから俺が5歳の時には既に姉は20歳で、その時にはテルを産んでいた。結婚はしてなかった。私生児でテルを産んで、両親と俺、それに姉とテルの5人で生活していたのだ。
で、俺の両親が10歳の時に交通事故で揃って亡くなってからは、姉が親代わりで俺とテルを一緒に育てた。
高校生の時、まだ小学6年生のテルが先に眠ってしまった夜なんかに、よく俺は聞いたのだ。
姉に。どうして結婚しなかったのかって。相手の男は誰で、どうしていないのだって。
その度に、姉は缶ビールを片手にケラケラと笑ったものだ。何が面白いのだろうと俺は不服だった。
だって、捨てられたんだろう?って。姉ちゃん、孕まされて、捨てられたんだろう?って。
それで一人で苦労して、弟と息子を未婚のままで育てているだろうって。
姉はとても綺麗な人で、その頃は小さな事務所で事務員の仕事についていた。戸籍の上では独身だったし、きっとモテたと思う。だけど付き合っている人もいないようだった。
そこの地味な制服を脱いで部屋着になった姿は、まだ20代だといっても十分通る可愛さだった。
こたつの向こうでもこもこの部屋着を着て、ビールを飲んで機嫌良さげに笑っていた。
記憶の中で、何故かいつも冬なのだ。あの3人で住んでいたマンションで、リビングでこたつに入っている光景ばかり。
中学生の頃から俺が何度聞いてもちゃんと答えてくれなかったのに、一度だけ、そう、姉が亡くなる前に一度だけ、答えのようなことを言った夜があった。



