今日は辻井さんが両親へ挨拶をするためにここへ来る。二週間前、私は辻井さんにプロポーズをされた。

「明日香さん、僕と結婚してください」

「……はい。よろしくお願いします」
 

 ライトアップされた噴水。

 赤、黄、緑、青、宝石のように輝く噴水の前で私の左手薬指にダイアモンドのリングがはめられた。

 誰かが願いを込めて投げた水の底に沈んだコインも、赤、黄、緑、青、宝石のように色を変え、叶っていてほしい。

 その夜、二人で『楓』のメープルケーキを食べた。

 あのクリスマスの夜と同じ味。それは幸せの味。父と母の顔を思い出した。


 そういえば、松重先輩のために作ったハート型のチョコ、ひび割れたものは父にあげたんだった。

「うまい」

 と、ただ一言呟いて黙々と全部食べてくれた。


 母は、体調が悪い時でも毎朝欠かさずお弁当を作ってくれた。しかも色合いが綺麗で、おいしくて、友達にいつも羨ましがられた。母が作ってくれるお弁当は私の自慢だった。


 お父さんお母さん、ありがとう。

 職場で辻井さんと出逢えたのも私の事を一番に考えて、大切に育ててくれたお父さんとお母さんのおかげです。


 そう思いながら、らくがき帳を閉じた時、インターフォンが鳴った。

 愛する辻井さんが来た。


 恋愛の行方なんて学生の頃にはわからない。

 精一杯生きていればいつか辿り着くべき所に辿り着くんだ。心も身体も。


 愛する人の元へ。



 ちなみに、松重先輩はプロのサッカー選手となりイタリアのクラブチームで活躍している。

 藤崎さんは女優になった。相変わらず綺麗で、朝ドラのヒロインに抜擢された。

 私は愛する辻井さんと家族になる。それが私の幸せ。




【恋愛の行方*END】