"それ"は突然やってきた。 私は、読書をしていた。 香奈子は、他の、私のクラスの子達と雑談をしていた。 リストカットの話題だった。 「なんで切るのかねー」 「痛いじゃんね」 「見て欲しいからでしょ?」 「うわー歪んでる!」 知らぬ顔をする傷を針で突かれているような不快感が溜まっていく。 自分のしている行為はそういう目的じゃないと、言いたくて、でも誰の耳に入るのもひどく恐ろしかった。 「馬鹿だからだよ」 ずっと黙っていた香奈子の声はぐさりと私の胸を突いた。