ダメだ……。
体力が完全に落ちてる。
こんな状態じゃ、楽器を握れない。
しばらくはマウスピースだけの練習になりそうだ。
部活が終わり帰宅した後、あたしは夕飯の前に近所を走ることにした。
失った肺活量をまた取り戻さないといけないから。
走って肺をきたえて、安定した音を出せるようにならないと。
あたしは部屋にあった短パンと白のTシャツを着て、髪を高い位置でポニーテールにして気合を入れる。
首にタオルを巻いて家を出ると、同じくランニングをしていた草太とばったり会った。
「あ」と、草太が足を止める。
「なんだ。おまえも走るの?」
草太はもう相当走った後なのか、額から垂れる汗が街灯に光っていた。
「うん。体力付けなきゃいけないから。
草太はもう終わるところ?」
あたしが聞くと、草太は首元の黒いタオルで顔を拭くと肩をすくめた。
「そう思ってたけど、おまえが走るなら俺ももう1回走るかな」
草太はそう言って、肩や首を回して体をほぐす。



