キミの背中。~届け、ラスト一球~



窓を開けると、湿気の多い風と共にグラウンドで練習する野球部の声が聞こえてくる。


4階の教室から見下ろしても、草太や陵雅さんの姿はすぐにわかって、自然と笑みが出た。


あたしはグラウンド側の一番後ろの席に座って、トランペットを一度机の上に置き、マウスピースだけを手に取る。


目を閉じて大きく息を吸う。


大丈夫。大丈夫。また吹けるようになる。


右手に持つマウスピースをゆっくり唇に当てると、一瞬ヒンヤリとした。


お腹で息を吸って、マウスピースに息を通す。


微かに唇が震え、浅い音が出た。


短くて、平べったくて、耳を塞ぎたくなるような音だ。


あたしは諦めるなと頭を振り、次はロングトーンの練習をする。


椅子の半分に腰かけ背筋を伸ばし、お腹に力を入れて息を吐き出す。


ドー。と、低い音を出来るだけ長く伸ばすけど、15秒ともたない。


中学の頃はまだ長く音を伸ばせていたのに……。


少し吹いただけで頬の筋肉が痛くなって、手でもみほぐす。


唇もジンジンと悲鳴を上げ、音を出せば出すだけ音質が悪くなっていった。