キミの背中。~届け、ラスト一球~



みんなが笑顔であたしに声をかけてくれる。


今までレベルだけで悪く判断していたからか、今この一瞬でガラリと吹部に対する印象が変わった。


草太の言う、物事頭で考えるだけじゃダメだって言うのは、こういうことなんだよね?


勇気出して動いてみたら、ずっと見えていなかった部分が急に見えるようになってくる。


あたしは、長谷川さんに素直に今の自分の状況を話した。


実は長いブランクのせいで音が前みたいに出せなくなっていること。


感覚を取り戻すのに、もしかしたら、野球部決勝の応援に間に合わないかもしれないこと。


そしたら、長谷川さんは全然驚くこともなく微笑んだ。


「普通はそうでしょ?一日吹かないだけで調子狂うんだから。
新堂さんは中学卒業してから一度も吹いてないんでしょ?そりゃ取り戻す時間かかるよ」


その言葉が、今のあたしにはとても有り難かった。


あたしはひとり音楽室を出て、近くの空き教室を使って音を出す練習をする。


今日は雨は降っておらず、窓から差し込む西日でゴールドのトランペットがキラキラと輝いた。