「先生、トランペットがひとり増えました。
これで野球部の応援、力強い演奏が出来ますよ」


顧問に言った長谷川さんは、あたしを見て更にニッコリ笑った。


あたしは顧問に頭を下げ、長谷川さんに誘導され音楽室に入る。


「みんな注目~!!」


長谷川さんが黒板の前に立ち手を叩くと、今まで思い思いに楽器を吹いていた20人程の部員が一斉にこちらを向く。


急に静かになると、耳に残った楽器の音で耳鳴りがする。


「今日から新堂さんが新しく吹奏楽部に加わります!!楽器はトランペットです!!新しい仲間が増えたからもっともっと練習頑張りましょうね!!」


みんなが真顔であたしを見ている。


静かな音楽室に、ドドドドっと緊張と不安で高鳴るあたしの鼓動の音が響いているような感じがした。


「新堂 希歩です。よろしくお願いします」


楽器ケースを両手で持って深くお辞儀をする。


すると、頭上で明るい声とパチパチとリズムよく刻まれる拍手が聞こえサッと頭を上げた。


「よろしくね~」


「一緒に頑張ろうね」


「人数少ないからウチら家族みたいに仲良しだよ~。
先輩後輩あんま関係ない感じ~」