「新堂さん……」
「あ、いいかな?
今更あの……トランペット、吹きたいなんて」
ずっと手紙の返事をしていないことに、もしかしたら長谷川さんが怒っているんじゃないかと思って、勢いよく出した声も、語尾が小さくなった。
「楽器の調子は昨日の夜ちゃんとチェックしてあるから。
ピストンは少し固くなってたけど、オイルをさしたらちゃんと動くように……っ!?」
あたしが言い終わらないうちに、長谷川さんがあたしに抱きついてきた。
あたしは驚いて、目を大きく開け瞬きを繰り返す。
「ありがとう、新堂さん」
耳元で震える、長谷川さんの声。
「ちょ……長谷川さん」
あたしが困った声で名前を呼ぶと、彼女は体を離して涙ぐんだ目であたしを見てきた。
綺麗な二重の目を閏わせて、鼻をすすりながら微笑む。
「ようこそ。銀海(ギンカイ)高校吹奏楽部へ」
ニコっと笑った長谷川さんは目元の涙を拭って、口元に可愛い小さなえくぼを作った。
遅い入部を認めてもらえホッとしたあたしも、目頭が熱くなる。