「決勝には、全校生徒で応援にくるんだろ?」
「校長はそう言ってたけど」
あたしは視線を落として口を尖らせる。
道端に、蹴るにはちょうどよさそうな石を見つけ、気分を紛らわせる為につま先で蹴った。
だけど、石ころはすぐに左に曲がり、いつもより流れの早い川に落ちて行った。
「俺ら、勝つよ」
草太が強く言う。
「絶対勝つ」
草太を見上げると、薄暗くなっていく中、彼の頬笑みがぼんやりと見えた。
二重の目尻を垂らして、すごく優しい表情であたしを見下ろす。
「おまえが吹ける場を、俺が作ってやるよ」
……草太。
「下手でもいいじゃん」
「………」
「試合が盛り上がるように、おまえなりに必死にトランペット吹ければ、上手い下手は関係ない」
「だろ?違う?」草太は眉を上げて言ったあと、左肩に提げるエナメルバックをかけ直した。
上手い下手は関係ない……?