「希歩は?」


灰色の空からあたしへ、ミナが視線を下ろす。


あたしは「うん?」と眉を上げる。


「吹部。どうすんの?」


「あ~……うん」


曖昧に返事を濁す。


「さっき長谷川さんこっちを気にしながら廊下歩いてったよ?」


「あ~、うん。そっか……」


小さく笑みを浮かべながら、スクールバックのファスナーをしめる。


「ごめんね。希歩の相談色々のってあげたいのに、それが出来なくて……」


ミナが眉をハの字曲げるから、あたしは慌てて首を振る。


「何言ってんの。ミナは部活が忙しいからいいんだよ、そんなこと考えなくて。ありがとね、ミナ」


あたしが言うと、ミナはあまり納得いかないというように渋々頷いた。


「でもさ、希歩」


「うん?」


「部活、やるかやらないかだけは、はっきり長谷川さんに言ってあげたほうがいいと思うよ?」


ミナに言われて、あたしは頷きながら唇を噛む。