軽く笑って草太に言ったあと、中をあけずにスクールバックの中に入れた。
「読めよ。部活のことだろ?」
「読むよ。でもあとでね」
口元だけで微笑むと、草太はため息をついて『あっそ』と短く言った。
あたしはそれに細かく頷くだけ。
登校する生徒のガヤガヤとした空間に、どんどん激しさを増していく雨の鋭い音がする。
雷鳴も轟いて、あたしの心を益々不安にさせた。
月曜の朝は、毎週体育館で全校集会がある。
今週木曜日に試合を控えた野球部に、校長がエールを送っている。
「今まで頑張ってきたんだから堂々と戦って来てほしい」だとか、「今しか出来ない高校野球。悔いの残らないよう自分の持つ全ての力を出し切ってほしい」だとか。
外はどんより天気なのに、ひとり熱く語る校長。
決勝まで勝ち進んだら、全校生徒で応援に行くと言っていた。
今しか出来ない……。
陵雅さんも同じことを言ってたよね……。