「兄さん、今年が最後だぞ?」


「………」


「いいのか?兄さんの最後の試合、おまえの大好きなトランペットで応援しなくて」


あたしの大好きなトランペットで……。


大好きな……。

今でも……?


もう吹けなくなってた現実に、正直ショックで辛かった。


1年半のブランクでレベルは落ちてると思っていたけど、こんな風に実際全く吹けなくなってるなんて。


野球部の試合まで残りわずか。


この長いブランク、1週間ちょっとで取り戻せるわけがない。


吹いていなかった日数の倍は必要だと思う。


間に合わないよ……。


「俺、好きだよ」


「え?」


「おまえのトランペット吹いてる姿。すげーカッコイイもん」


草太の頬笑みが、柔らかな街灯にぼんやり浮かぶ。


「まぁ、俺の我がまま。もっかい、おまえの吹いてる姿が見たいってゆーさ」


……草太。