キミの背中。~届け、ラスト一球~



野球、あたしはそんなに面白いとは思わない。


毎日毎日汗かいて必死になってボールを追って熱くなる姿を見ていると、たまになんだかこっちが恥ずかしくなる時があるんだ。


野球で食べていけるわけじゃないのに……。


どうしてそこまで必死になれるんだろう……。






「希歩(キホ)。どうして朝から汗だくなの?
今日も湯野くんの後ろに乗って来たんでしょ?」


「う~ん、そうなんだけど~」


教室に入った途端、汗でおでこに前髪のくっついたあたしを見て親友のミナが眉を寄せた。


あたしは口を尖らせながら、グラウンド側の後ろから2番目の自席につく。


「草太と口論してるところを陵雅さんに見られちゃってさ」


そう言いながら、少し遅れて教室に入って来た草太に目を向ける。


草太の席は廊下側の一番後ろだ。


「兄さんに!?」


野球部のマネージャーをするミナもまた、草太と同様陵雅さんのことを兄さんと呼ぶ。