キミの背中。~届け、ラスト一球~



高校1年の時、帰宅部のあたしは草太の帰りを待ちながらグラウンドのフェンスの外から部活風景を見ていた。


野球バカの草太が汗だくになりながらボールを追う一方、厳しく後輩に声をかけている陵雅さんの姿がとてもかっこよく見えたの。


上にはまだ先輩がいるにも関わらず、野球の才能があるから先輩達も後輩への指導は陵雅さんに任せているように見えた。


黒の短髪、こげ茶に焼けた小さな顔。


ぱっちり二重の陵雅さん。


見た目は野球部っぽくガッチリしてるのに、休憩のときに見せる柔らかくて可愛い笑顔にギャップを感じてすぐに好きになってしまった。


フラれるのが怖くて高2になっても告白出来ずにいるけど、この気持ちはずっと胸に秘めておこうと思う。


普通に話せる今が、幸せだから。


あたしを置いて自転車を押しながら陵雅さんと歩くふたりの背中を見る。


陵雅さんの背中には黒の大きなエナメルバックが重そうに肩から下がっている。