キミの背中。~届け、ラスト一球~



「あ!!草太のバカ!!スマホが!!」


あたしは慌てて自転車から降りて水たまりの側に落下したスマホに手を伸ばす。


「もう!!草太のアホ!!
これでスマホ壊れたらどうしてくれ……る、の、よ……」


大声で怒鳴りながらスマホを拾い少しずつ視線を上げると、目の前に男子生徒の足があった。


大きくてごついスニーカーの上に、長めの黒いズボンの裾が乗っている。


少しずつゆっくりと体を起こし、あたしは上目づかいで唇を噛んだ。


顔を上げると意外と朝日が眩しくて、目を細める。


二重でも対して大きくない目なのに、眩しさで細めてたら余計細くなっちゃうじゃん……。


「陵雅さん……」


スマホをウエストの位置で弄び、横髪を耳にかけたり前髪を触ったり。


そして、肩を少し上げ顎を引く。


「おはよう。相変わらず朝から賑やかだね」


ププっと笑われて、梅雨の湿気でジメジメしていた体からジワっと汗が噴き出す。


あたしのバカ……

またこんな可愛くない姿を見られてしまった……


無理して作った女らしい仕草をやめ、小さなため息とともに方の力を抜く。