キミの背中。~届け、ラスト一球~



長谷川さんが一歩前に出てトランペットをかまえ、一回縦にトランペットを動かす。


それに合わせ、あたし達は大きく息を吸った。


トランペットの軽快なリズムから始まり、ホルンとトロンボーンの深くて低いロングトーンが重なる。


軽く、とにかく軽く音を出す。


ずっと練習を続けてきたタンギングを存分に使う。


ホルンの響きのあるリズムいい音が客席に響き渡り、そこにトランペットのメロディが加わる。


トランペット、ホルン、トロンボーン、ユーフォ、チューバがフォルテッシモで力強く。


練習を必死に積み重ねてきたから、8つの楽器から出た音達がステージの上を軽快に踊りだした。


チューバの低い伴奏に合わせ、トロンボーンのメロディが軽やかに駆けだし、ワンオクターブまで上がったトランペットの高音が、どこまでもどこまでも貫いた。


盛り上がった後は、チューバの穏やかな音に導かれ、あたしは一歩前へ出る。


ソロだ。


なめらかに、ゆっくりと、ビブラートをきかせて観客にトランペットの音色を聴かせる。


そしてあたしは長谷川さんと入れ替わり、後ろに戻った。


トランペットとホルンが奏でるハーモニー。


まるで二つの楽器からこぼれた音符が、草むらの上をじゃれあいながら踊っているようだ。