教室に戻る前にトイレに行こうとしたら、廊下の突き当たりから草太の声が聞こえてきたので歩く速度を上げた。


「草……っ!?」


大声で名前を呼ぼうとして、慌てて口を抑えて壁に体を隠す。


1階の階段下の、人気の少ない場所。


朝のHR前はトイレが込むから、教室から少し離れたトイレに行こうと思ったんだ。


まさか、草太が告白されてる場面に出くわすとは……。


あたしは廊下の壁に背中を付けて息を殺し、耳をそばだてる。


「ごめん。俺、付き合うとかはできない」


「もしかして、他に好きな人がいるとか?」


女の子の顔は見えなかったけど、お互いタメ語って事は、同学年の子だろう。


「あー、まぁ」


草太の返事に、ドクンと心臓が鈍い動きをした。


「いるよ。
俺、そいつしか考えられないから」


……え?


草太、好きな子いるの!?


え?なにそれ!!


あたしそんなの知らないよ!!


心臓が急に速度を増したからか、足に力が入らなくなり震えが来た。


草太に……好きな子が……?


誰……?