そのチョコをミナの手に持たせたあと、あたしは椅子の上に膝立ちになり後ろの席をクルリと振り返った。
「草太達も食べる?」
一番の後ろの席にゆったり座っている草太と同じ班の男子達に、チョコのお菓子を見せる。
「おまえ、もう食べるの?」
ミナと同じことを言う草太が苦笑いする。
「いいじゃん。はい、これ後ろみんなで分けてね」
あたしはチョコの袋ごと草太に渡し、前を向いて座り直す。
高速に乗ったバスは、どんどんスピードを上げ流れに乗りだした。
窓の外の景色は山しかないけど、これから都会に行くんだと思うとワクワクしてまた上半身が上下に動く。
コツン。
頭に何かが当たり、あたしはグっとを顎を上げて見上げると、草太があたしを見下ろしていた。
「食う?」
草太の手には飴。
あたしは勢いよく後ろを振り返り、大きく頷いた。
いくつかの飴を両手で受け取り、ミナと分け合う。
大阪での自由行動も楽しみだけど、移動中のこの時間も大好きだ。