「………」
「あたし、勝手にキレて、草太にイヤな思いさせてさ」
あたしは、膝の上で拳を握った。
「陵雅さんの進学をミナから聞いたとき、信じられなくて焦って、自分の気持ちしか考えてなかった」
「………」
「陵雅さんにあんな理由があるなんて知らなかったから」
「ああ、聞いたの?兄さんから」
あたしは、コクンと頷く。
「俺も悪かったよ。兄さんの事情は言えないけど、おまえに早く教えてやればよかったって、ちょっと後悔もした。ごめん」
「草太が謝ることじゃないよ。あたしが一方的に言ってキレてただけだから」
あたしは体ごと草太の方を向いて、力んで声を出した。
「本当に、ごめん」
あたしが言うと、草太は急に立ち上がり、グーっと夜空に向かって伸びをした。
あたしが草太を目で追うと、クルリと振り返った草太が軽く肩をすくめた。
「腹へらね?」