前方から差す夕日に視界がぼやけ、一瞬白く見える。


顎を引いて日を避けるように隣の草太を見ると、草太は眉を上げ砂浜の方を顎で指した。


そこに目を向けると……。


「え……え?」


グっと目が丸くなる。


え……?これ……。


目の前に広がった光景、それは……。


砂浜に描かれた大きな2段のケーキに、1本のローソクがケーキの中央に描かれていた。


そしてそのローソクに、まるで本当に火が付いているかのようにユラユラ揺らめく海面に伸びる夕日。


『キホ happy birthday』


ケーキに描かれた文字に、あたしは涙が溢れた。


「草太……これ……」 


頬に流れる涙を拭い、口元に手を当てる。


「ごめん。俺マジでカネなくてさ、こんなことしかしてやれないかった」


「………」


「しかも、おまえ別に欲しいもんないとか言うし、何やればいいのかわからんくてさ」


草太が不器用に頭をかく。


「形に残る物じゃないけど」


草太……。