「おい!!待てって!!」
草太が早歩きで近づいてくるのが、車輪の音でわかる。
だからあたしはもっと速度を上げたんだ。
ふたりで競歩のように歩き、途中でこの行動が笑えてきて一緒になって笑いながら競歩をした。
草太に追い抜かれて、またあたしが草太を追い越して。
くだらないやり取りを、家に帰りつくまで繰り返す。
小学生の頃もこういうことをしたような覚えがあるけど、あたし達、その頃と全然変わっていないね。
まだまだ子供のままだけど、楽しいから、まぁいいか。
オレンジ色と、紫、紺、黒がマーブル状になる空の下に、あたし達の笑い声と、自転車の車輪の音がどこまでも響いているような気がした。