「くそっ!!おまえがくだらないことするからだろ!!」


「うわっ!!」


先に目を逸らした草太が、あたしの手から帽子を奪い取り、何故かあたしの頭に深くかぶせてきた。


目まで隠れたあたしは、手の平で帽子をずらす。


おかげで、前髪がグチャグチャだ。


「ちょ!!何すんのよ草太!!」


あたしが叫ぶと、草太はエナメルバックを左肩に提げあたしを置いて去って行く。


「待ちなさいよ!!
せっかく迎えに来てあげたのに、あたしを置いて行く気?」


慌てて立ち上がり、草太の背中を追う。


だけど、すぐに立ち止まってしまった。


だって、見えたんだもん。


トイレの角を曲がって行く草太の横顔が、真っ赤に染まっていたのが。


ドクン。


……え? なに?


鼓動が高鳴って、身動きが取れなくなる。


あたしはなんだか妙な気持ちになって、草太の汗臭い帽子をギュっと握りつぶした。