そして、まだ俯き続ける草太の帽子を無理矢理外してやろうとした。
帽子がとれた勢いで草太の短髪がボサボサになり、ハっと上げた草太の真っ赤に腫れた目がはっきり見えた。
「うわ。酷いねその目。
そんなんでみんなのとこ帰れるの?」
「冷やせばすぐ治る」
「いや、無理じゃない?」
「うっせーな。
治るっつってんだろ!!」
草太が勢いよくあたしから帽子を取り返そうと手を伸ばした。
だけど、あたしはいつも遊ばれるおかえしとしてヒョイっと帽子を遠ざける。
草太も負けじとあたしの方へ体ごと向かってくる。と、その時。
あたしと草太の手がずれ、ふたりの顔だけが異常に急接近した。
鼻と鼻が触れ合いそうな距離で、お互い目をパチクリさせる。
ドドドドドドド。
試合前の緊張とはまた違った高鳴りを始める心臓。
顔が熱湯をかぶったように急に熱くなり、全身に冷や汗が流れる。
息さえもできない距離に、あたしはゴクリとつばを飲み込んだ。



