「ありがとね」
「………」
「今日、本当にいい試合だったと思う」
草太が肩を少しあげ、ユニフォームで涙を拭う。
「負けたけどさ、応援者で涙を流してる人ひとりもいなかったよ?」
「………」
「帰って行くみんなの表情ね、すごく明るかった」
「………」
「満足してたの。すごく幸せそうにみんな笑顔だったんだよ?」
鼻をすする草太。
「あたしも、今日はすごく幸せだった」
ギュ――…。
あたしは、コンクリートに膝を立て、涙を流し続ける草太を強く抱きしめた。
更に草太の肩が激しく上下し始める。
「野球バカ泣き虫草太」
普段なら、あたしの嫌みに攻撃してくる草太も、今日は嗚咽をこぼすばかり。
「泣くなアホ」
「うっせ……」
震える声で言った草太は、ようやくあたしのわき腹を小突いてきた。
あたしは一瞬ヘナっと体をよじらせたけど、すぐに体勢を整える。



