「アホ。野球バカは兄さんも一緒じゃん。今頃どっかでひとりで泣いてるかもよ?」
「………」
草太が静かに笑う。
草太が俯いて静かに笑う時は、泣きたい時だ。
「今兄さんとこ行けば、おまえの株もあがるぞ」
言いながら、草太の声が詰まる。
草太は深めにかぶった帽子のつばを掴み、更に下にさげた。
つばをギュッと握り、唇を噛みしめる草太の頬にツーっと涙が流れていく。
「そんな涙声で言いながら、よくあたしの株のこと気に出来るね」
あたしはスカートを押さえながら、草太の横に座りこむ。
草太はあたしから顔をそむけ、必死に嗚咽を堪えているようだった。
あたしまでつられて泣きそうになったけど、今日はきちんと堪えられる。
きっと、やりきったからだ。
すごく心がすっきりしてるんだもん。
去年の試合は、草太と一緒になって涙を流したけれど、あの頃のあたしとは全く気持ちが違った。
「草太」
「……ッ」
返事の代わりに、草太の嗚咽が聞こえる。



