草太がんばれ。
陵雅さん、がんばれ。
9回に入ると、球を投げる陵雅さんに疲れが見え始めた。
グローブの中でボールを握り、肩で息をしているのが遠目にも分かった。
相手校の吹奏楽部の演奏や、応援団の声が風に乗って届く。
ドクンドクンドクンドクン。
手を組んで目を閉じると、高鳴る鼓動に合わせ瞼が大きく脈打った。
相手校の応援も、かなり必死だ。
大きな旗を振り回し、喉が張り裂ける程の声を出し、楽器が壊れるくらい音を出している。
“勝ちたい”
この気持ちは、両校同じだ。
呼吸が整ったのか、陵雅さんが動き始める。
手に白い粉を付け、左足を何度か地面に付け体勢を整える。
右肩を少し上げ、ユニフォームで顔の汗を拭った陵雅さんは、力強くボールを投げた。
ストライク。
あたしは、ゴクリとつばを飲み込む。
よし。大丈夫。このまま。この調子。
次も、ストライク。
あたしは陵雅さんが投げる度に体に変な力が入り、爪が食い込むくらい手を組んだ。



