まだ、キレイな音とは言えない。
きっとこれはテレビ放送をされているから、テレビで見ている人は何て耳障りな音だと耳を塞ぐかもしれない。
だけど、これが今のあたしの音色だ。
練習の時間が足りずに未熟のままだけど、ちゃんと音も出せるようになり安定するようになった。
届け。届け。
野球部に、あたし達の応援、届け。
1回の得点は両校ゼロ。
相手校の攻撃の時に、あたしは唇を休ませ頬をマッサージした。
唇がしびれて、大きな音で全力で吹いたから指先に酸素が回らずビリビリする。
トランペットをかまえる時二の腕にかかる重み、リズムを取る度に動く体。
試合を見ながら吹くって、こんなにも楽しいんだ。
草太。あたし、今最高に楽しいよ。
ちゃんとそっちまで音届いてる?
あたしの下手くそな音で、試合の興奮を駆り立てられてる?
試合が進むにつれて、あたしの唇の調子も野球部の調子も上がってきた。
草太の打撃で点が入った時には、楽器を離して思わず叫んでしまいそうだった。
ウチの攻撃が終わってから、長谷川さんと一緒に抱きついて喜びあう。



