右端にあたしはいる。


草太がバッターをかまえるのを見ながら、貫くような音を下まで届けるんだ。


顧問の指揮を見て、ベースを踏む野球部員を見て。


首筋に汗を流しながら、応援する自分。


ガっと目を開けると、今から起こるであろう感動に気分が高まった。


球場に到着すると、決勝戦とあって一般の人もたくさん来ていた。


バスから降りると多くの人達でごった返している。


「みんな~、人が多いからキビキビ行動してね!!」


「はいっ!!」


長谷川部長の声に、みんながシャキっと返事をする。


「小さい楽器の人は、パーカッション運ぶの手伝って~!!」


長谷川さんの大声の指示も、溢れる人の話し声でもみ消されそうだ。


あたしもトランペットケースを左手に抱え、右手で持てるものを運ぶ。


ムシムシする気温で、移動だけで汗だくになってしまう。


だけど、スタンドから見た景色は最高だった。


県の球技場だからもちろん甲子園に比べたらとても小さいのだけれど、草太や野球部員達の夢がここから開けるんだと思うとすごく感動する。