「兄さんや他の3年生に、いい思い出残してほしいからな」
早々とお弁当を食べ終わった草太が、後ろに手を付きグーっと空を見上げる。
あたしも急いで残りを食べ、小さなお弁当袋にしまう。
「やっぱ、行きてぇもんな。甲子園」
非常階段の下を、少し涼しい風が通り過ぎた。
汗ばんだ首筋に風が触れ、暑さで感じる肌ストレスを和らげてくれる。
あたしも、体育座りをして空を見上げた。
よく晴れた青空に、大きくて白い雲がいくつか浮かんでいる。
ひとつひとつ大きさの違う雲が流れ行くのを、目で追う。
甲子園目指して今まで頑張って来たんだもん。
そりゃ、行きたいよね。
野球を愛する陵雅さんの気持ちも、草太の今までの頑張りも知ってるから、明日、どうしても勝って欲しい。
「明日、あたし全力で応援するからね」
「うん」
「試合の流れによっては、演奏放棄するかもしれないけど」
あたしが冗談で言うと、草太はあたしの二の腕を軽く殴って「真面目にやれ」と笑った。



